クリーンルームではなぜ「走ってはいけない」のか?
2026-08-10

床面粒子の舞い上がりを微粒子可視化カメラで検証

クリーンルームでは、作業者の動作一つひとつが清浄度や異物混入リスクに影響します。 今回は、床面に一定量の疑似汚れを散布し、「歩く場合」と「走る場合」で粒子の舞い上がり方がどのように変わるのかを可視化しました。

クリーンルームとは
クリーンルームとは、空気中に浮遊する微粒子の濃度を管理し、必要に応じて温度・湿度・圧力なども制御した空間です。医薬品、化粧品、食品、電子部品など、異物や微生物の影響を抑える必要がある製造環境で利用されています。
高性能な空調設備やフィルターを備えていても、清浄度は設備だけで維持されるものではありません。作業者の移動、衣服の動き、資材の持ち込み、清掃状態など、日々の運用が品質を左右します。
なぜ床面粒子に注意する必要があるのか
床面に存在する粒子は、その場に留まっている限り、空中を漂う粒子とは異なります。しかし、作業者の足の動きや空気の乱れによって再び舞い上がると、周辺設備や作業面、製品へ移動する可能性があります。
つまり、クリーンルームでは「床が汚れているか」だけでなく、「床面の粒子を舞い上げない行動ができているか」も重要な管理要素です。
検証条件

※本検証は、動作による粒子挙動の違いを視覚的に確認することを目的とした定性的な比較です。粒子数や滞留時間を定量測定したものではありません。
歩いた場合:舞い上がりは限定的
歩行時には、白く可視化された粒子がわずかに確認されるものの、画面内に広く拡散する様子は見られませんでした。床面を踏み込む力や身体の移動による空気の乱れが比較的小さいため、粒子の舞い上がりが限定的であったと考えられます。


走った場合:粒子が広範囲へ拡散
走行時には、踏み込みと蹴り出しによって床面のタルクが大きく巻き上げられました。可視化画像では、粒子が進行方向だけでなく周囲へ広がり、作業者が通過した後も空気中を移動する様子が確認できます。


歩行と走行の比較

「走らない」は安全ルールであると同時に、品質ルール
リーンルーム内で走らないことは、転倒や衝突を防ぐためだけのルールではありません。走行によって床面粒子が再浮遊すると、清浄度の低下や、設備・作業面・製品への粒子付着につながる可能性があります。
重要なのは、ルールを「守らせる」だけでなく、なぜ必要なのかを、目で見て理解できる形で伝えることです。根拠のある教育は、作業者の納得感を高め、日常動作の改善と品質意識の定着につながります。
可視化と教育を、清掃品質の向上へ
当社では、クリーンルーム内で起こる粒子挙動を可視化し、その結果を社内教育へ反映しています。経験や感覚だけに頼るのではなく、実際の画像を用いて「どの動作が、どのような影響を与えるのか」を共有することで、作業手順の意味を理解した人材育成を進めています。
クリーンルーム清掃では、汚れを除去する技術だけでなく、作業中に粒子を舞い上げない動作、清浄度を乱さない資機材の扱い、汚染を広げない作業順序など、専門的な運用が求められます。こうした検証と教育の積み重ねが、安定した清掃品質につながります。

まとめ
- 床面へタルク3 gを30 cm四方に均一散布し、歩行と走行を同一条件で比較しました。
- 歩行時は粒子の舞い上がりが限定的でした。
- 「走らない」という基本動作は、安全確保だけでなく清浄度維持と異物混入防止の観点からも重要です。
- 可視化した根拠を教育へ活用することで、作業者がルールの意味を理解し、清掃品質の安定化につなげられます。
目に見えない粒子を「見える根拠」に変えることが、行動を変え、品質を守る第一歩です。
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