管理基準値の指標について ―捕獲数0目標は可能か? ―

衛生環境管理サービス

昆虫モニタリングを行う上で、管理基準値というものを設定することがあります。これは、ざっくばらんに言ってしまうと、「この程度の数にまで昆虫の数を抑えたいな」という目標の数値になります。

こう言うと、「じゃあ、捕獲数0を目指しましょう」と答えたくなりますね。

もちろん、ある意味で正解だと思います。昆虫の数を抑えるためにモニタリングをしているのですから、捕獲数0はとてもきれいな数字で、魅力的な目標値になります。

 

しかしここで問題になるのは、昆虫の捕獲数は、どうしても「建物の構造」や、その「運用方法」に依存してしまうという事です。

実は、クリーンルームなどでは、捕獲数0を目指すのは普通の事であったりします。

微細な埃の量にさえ気を付けなければならない空間ですから、「生きた昆虫が存在してはいけない」というのは、当たり前の事ですね。そしてもちろん、クリーンルームなどでは、「昆虫が侵入できないような建物の構造」があり、「昆虫を持ち込まないための運用手順」がしっかり定められているはずです。

では、他の場合ではどうでしょうか。当社では、医薬品の保管倉庫なども多く取り扱っています。そのような倉庫で、0を目指すことは可能でしょうか。

結論から言うと、「0を目指すことはできる」かもしれませんが、「常に0を保つことは現実的に不可能である」と言わざるを得ません。現実的でない目標を設定することは、運用管理として良い状態ではないですね。

倉庫には荷物を出し入れするバースがあり、これは外部に解放されている状態にあります。建物の外には、私たちが想像する以上に小さな昆虫たちであふれています。これらの侵入を抑えることは実質不可能です。よく、防虫の手段として挙げられる、シートシャッターやエアカーテンなどでも(侵入する虫を減らす効果はありますが)昆虫の数を0にすることはできないでしょう。

極端な例として、倉庫のバースエリアを出しましたが、倉庫のバースの無い階や一般的な工場などでも、昆虫を0にする事は非常に困難になります。昆虫は非常に小さいため、小さな隙間からでも侵入してくることが可能です。人間が出入りするということは、人間の大きさの解放があるという事ですから、昆虫の侵入を防ぎきることは不可能と言ってよいでしょう。

 

では、何を目標に、防虫を行えばよいのでしょうか。

そのために存在するのが、管理基準値です。

昆虫の侵入や繁殖を、どの程度まで許容し、どの程度からどのような対策を行うか。その指針となるのが、管理基準値となります。

 

当社では、今年改めて、建物の用途ごとの管理基準値の設定を見直しました。建物の防虫管理にお悩みの製造業者様、保管業者様が居られましたら、どのような管理を行うべきかを含めてご対応させていただきますので、是非ご相談ください。

 

ペストコントロール業務管理部 技術部長

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